皮膚小手術とは
しみやホクロなどの色素班、粉瘤や脂肪腫などの盛り上がったものなど、良性のものであっても見た目が気になるなどの理由で切除を希望される場合、当院では外来(日帰り)にて、小手術を行っています。また良性のものか、悪性のものか視診や触診で判断が難しい場合、日帰り手術を行って確定診断することもあります。
年間手術実績(2022年8月~2023年7月)
- 皮膚皮下腫瘍切除術 116件
- 皮膚悪性腫瘍切除術 4件
- 皮膚切開術 37件
- 陥入爪手術 5件
ほくろ
ほくろはメラニン色素をつくる色素細胞が変化した母斑細胞の塊で、基本的には良性腫瘍の一種であり、治療の必要はありません。子供のころは平らでも、次第に母斑細胞が増え、盛り上がってくる場合もあります。
除去方法としては、局所麻酔を施した後に外科的手術により取り除く方法と、炭酸ガスレーザーによってほくろを焼き、消していくという方法があります。ほくろの大きさや部位、跡が残る可能性などを考慮しながら、方法を選択します。
ほくろのように見えるものでも、短期間で急に大きくなったものや、出血のあるもの、直径5ミリ以上で形がいびつだったり境界がはっきりしないものは、悪性黒色腫の可能性があります。この場合、ダーモスコピーという器具で観察し診断しますが、悪性の可能性が高い場合、また将来的に悪性腫瘍に発展する可能性のある場合は切除します。その際は同時に皮膚生検を行い、診断します。
“ほくろ”と“ほくろのがん”
“ほくろ”は誰にでもあるものですが、病名としては色素性母斑もしくは母斑細胞母斑といいます。“ほくろ”はメラニン色素をつくる色素細胞、あるいは母斑細胞が増えることによって生じ、産生されたメラニン色素により黒く見えます。良性腫瘍の一種であり、放置していても問題はありません。
問題は“ほくろのがん”である悪性黒色腫、メラノーマです。この腫瘍は皮膚がんの中でもたちが悪い腫瘍で、比較的早い段階で転移します。なので、転移する前に発見して取り除く必要があります。早い段階で“ほくろ”なのか“ほくろのがん”なのかを区別するのが重要なのです。区別のポイントは「いつからあるか」「大きさはどうか」「変化があるか」などです。「大人になってからできた」「6㎜以上の大きさがある」「大きくなった」「形が変わった」などがあったら“ほくろのがん”を疑ってみる必要があります。
皮膚科ではダーモスコピーという器具で観察し、必要があれば切り取って組織検査をします。気になる場合はご相談ください。
脂肪のかたまり(粉瘤と脂肪腫)
俗にいう”脂肪のかたまり”とは皮膚や皮下にできる”しこり”を指すことが多いようですが、病名でいうと”粉瘤”のことが多く、”脂肪腫”のこともあります。
”粉瘤”は、”毛”を構成する毛包上皮、特に毛包漏斗部といわれる部分が袋状になって”嚢腫”を形成したものです。袋状になっていて、角質、すなわち“あか”がたまったもので“脂肪のかたまり”というわけではありません。中にたまっている“あか”が中央の小さな穴から出ることがあり、これが“脂肪”“あぶら”に見えるためそのようにいわれるようになったのかもしれません。
もうひとつの”脂肪腫”は成熟した脂肪細胞からなる良性腫瘍ですから、”脂肪のかたまり”としてはこちらの方が近いかもしれません。
粉瘤は”粘土様の”硬さであることが多く、脂肪腫は柔らかいことが多いですが、区別が難しいこともあります。どちらも良性のできものですが自然に消えることはなく、徐々に大きくなることが多いです。
治療はいずれにしても外科的切除になりますが、小さいうちに切り取ってしまうと安心です。大きくならないうちにご相談ください。
陥入爪
爪が食い込んで刺さった状態になることを「陥入爪」といいます。
爪が刺さっているため歩くたびに痛みを生じます。傷になって不良肉芽を生じることも多いです。さらに細菌感染を引き起こし、「ひょう疽」になることもあります。
テーピングなどの保存的治療で改善しない場合は、テーピングなどの保存的治療のほかに、手術療法があります。爪を一部取り除く方法として外爪甲側縁楔状切除術やフェノール法があります。
すぎのこ皮ふ科クリニックでは、爪を温存するガター法を主に行っています。ブロック麻酔下に不良肉芽を除去して爪辺縁に保護するチューブを装着します。爪が伸びるまで2か月ほどかかりますが疼痛はかなり軽減され、爪も温存することができます。